2004年 10月 11日
10月10日、テレビでやってましたな。全米でも1位になったというので、観てみました。 いやあ、きれいなものを見せてもらったわ。月並みな言い方やけど、一つ一つのシーンが「絵」になってる。どのシーンを取り出しても「絵」になりそう。それだけ監督がこだわったんやろなあ。 話の内容は、秦王(後の秦の始皇帝)のもとに、ひとりの男が謁見するところから始まって。その男、秦王を狙う3人の刺客を倒して、その報告に来たという。その顛末を話し出すが、実は・・・。という話。話し手の、話の内容が二転三転して、それぞれの場面を再現するところは、「羅生門」にも似ている。実はどうなんや?というサスペンス。でもサスペンスの要素はやや薄いかな。 「東洋のマトリックス」とかいう宣伝文句があったらしいけど、そんなものと比べてはいかんなあ。あちらは「アクションのためのアクション」のような映画やった。「いかにワイヤーアクションの醍醐味を見せるか」みたいなね。でも「HERO」はほとんど「舞い」の世界ですな。はでなアクションを期待する向きには不満があるかもしれへんけど、あの殺陣の美しさは、アクションという言葉で片付けてはいかんような気がする。 京劇の殺陣に通じるものがあって、「迫力」とか「迫真の」とかいうのとはまったく逆の、「様式美」のようなものが全編を貫いてたな。それは殺陣だけじゃなくてね。 「そんなことは出来るわけがないやろう」というような殺陣もあるんやけど、それが許されるのが中国の歴史劇のいいところかも。たとえば歌舞伎の舞台に黒衣が出て来るのと同じように、「そういうこともあるんや」という目で観ると、映画の中に入っていける。 それに、なんといっても「間」がたまらん。台詞も少ないし。役者が何もしゃべらず、じっとしてる場面も多い。その美しさ! それからいうと、主演のジェット・りーは、顔がきれいすぎて役にはまり切ってないような気がする。女剣士のマギー・チャンが、ぴったりはまりすぎてただけに、よけいに。 それと、こういうことが、昔昔の中国には実際にあったんとちゃうか、実際にこういう剣士が追ったんとちゃうかと思わせるところもあるな。なにしろ歴史が長いんやから。「妖術」とか出来る人間がほんまに居ったかもしれんしな。 そこが中国映画のすごいところで、ハリウッドがこういう荒唐無稽とも思える話をつくろうとすると、どうしたって「マトリックス」みたいなSFか、「ロード・オブ・ザ・リング」みたいなファンタジーに落ち着いてしまう。というかそういう題材でないと到底出来ないやろけど、中国は「歴史劇」に無理やり入れてしまうことが出来るねんなあ。 考えてみたら日本かて、「歌舞伎」や「能」といった、独自の伝統芸能が(しかも長い歴史がある)あるから、こういう映画が出来そうな気がするねんけど。あ、時代劇がそれに近いか。忍者とか。
by tacobu
| 2004-10-11 13:59
| 映画
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