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たこぶ・ろぐ-日本一お気楽な48歳-

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2006年 01月 22日

エラいものを読んでしまった

土曜日。市立図書館へ行った。気のせいか、本が少なくなってるような気がした。移転の噂もあるねんけど。古いからね。遠くになったらいややな。でも、新刊もいっぱい入ってたから、すぐに閉まるということはなさそうなんやけど。

前回、「6冊借りたけど2冊しか読めてない」て書いたけど、実は読めたのは1冊だけやった。2冊目は返却日までに読め切れなくて、結局もう一回借りました。それが村上春樹の「アフターダーク」(講談社)。

なんというか。「エラいものを読んでしまった」という気分やな。それもいい気分やねんけど。今までにもこういうのを読んだことはあるけど。しかし。ここまでおかしいのは(笑うという意味ではない)なかったかも。
話は3つほどに分かれてて。というか、3つの話が同時進行してるような。そのうち2つはきっちり寄り添っているような。しかし3つ目は・・・なんじゃこりゃあ、と思ってたら、最後にちょっとだけ寄り添って。うーん。なんとも説明のしようが難しい。

まずは深夜のファミレスでひとりで時間を過ごす娘が居て。そこに徹夜のバンド練習をする前に、そのファミレスに寄った男の子が居て。その男の知り合いの、ラブホテルのオーナーが、ホテル内で起こった暴力事件で、暴力を受けたのが中国人だったので、中国語がしゃべれるその娘に助けを頼み。というのがひとつめの話。

さて、どうやらその中国人の娼婦を暴行した客の男性の話しがあって。

もうひとつ。娘の姉の様子。これが、話というより「ようす」をただ説明してる。それがどうもSF的。映像的。読者を巻き込むようなかたちで「映像」として語られる。

3つの話は時間を追って、それぞれ同時進行的に語られるので、これがその同じ夜に同時に起こった出来事というのだけははっきりしてるようやけど。しかし、個々の事件の詳細とか、娘の姉に起こったことの説明とかは一切なく、物語は朝になってハタと終わってしまうのですな。なんという幕切れ。

読んでると「ええ?これってどういう意味よ?」とか「何でこうなるの?」という謎がいろいろ出てくるねんけど。SF的なところだけやなくて、普通の会話でも「それは今、話したくない」とか言って、それで話が終わってしまうことも。なんとまあ。

しかし。こういうことってあるのではないかなあ。説明のつかないこと。というより。現実世界には説明のつかないことのほうが多い。何でそうなったのか。分からないことの方が多い。それをそのままにしておくっていうのは、実は勇気がいるのではないかな。作家にとっては。それをやり遂げたってことか。村上春樹は。

人によっては「何がなにやら、さっぱりわからん」というやろし(わしもわからん)「こんなん、面白ない」という人も居るやろけど。僕は好きですね。いろいろ考えてしまったけどね。全部の話のつじつまがあうように謎解きをする人も居るかも知れへんけど、考えへん方が楽しいかも。



不思議な小説がもうひとつ。不思議、というてもこちらはファンタジーなんやけど。
ロアルド・ダールの「チョコレート工場の秘密」(柳瀬尚紀訳・評論社)は去年映画になって大ヒットしたな。昔から有名な話やったみたいやけど。何度も翻訳されてたみたいやけど、今回は新訳ということで。しかも柳瀬尚紀。この訳が素晴らしい。巻末に名前の訳の説明が載ってましてね。チャーリー・バケットはチャーリー・バケツになってる。これは元の名前を英国人が読むとピンと来るらしい。へえ。その他、Saltと「ショッパー」とかね。ちょっと凝り過ぎかもとも思えるけどね。でも面白かったな。

話の内容はね。まあありがちやねんけど。途中の、工場に招待された子供たち大人たちと工場主のワンカ氏とのやり取りが、なんともいえずちぐはぐで楽しい。結末も思ったとおりやねんけど。途中のブラックな展開がなんともいえず面白く楽しめました。児童文学となってるけど、ノリはやっぱりロアルド・ダールでしたな。



渡辺武信の中公新書を読むのは3冊目。「住まい方の演出」は、副題に「私の場を支える仕掛けと小道具」となっていて。家を構成するもの(窓、壁、戸から家具にいたる)についてのいろいろ。建築家としてどう演出してるのか、というよりそれらをネタにしたエッセイともとれるな。著者の大好きな映画のシーンやミステリーの一節などをいっぱい引用していて、その人の住まいにどうマッチしているか、どういう演出がなされているか。を説明してくれて。さらにはさすが建築家で、それを実際の住まいにどう生かせるかまで書いてる(時もある)。

映画好きのわしにはなかなか面白かったな。それにね。「こうなったらええな」と思ってた常識みたいなものを覆してくれててね。それでいて何もかも否定する、ということもないのがいいです。ホンマに面白いな。続けて、別の本も読んでみたくなってしまいますわ。



土曜日、図書館でまたまた植草甚一の本を借りてしまった。しばらく読まんとこうと思ってたのにな。何でって。真似しをしそうになるから。(って、もう手遅れやけどな。)

しかし。手にとってしばらく眺めてたら、誘惑に勝てなかったよ。これはまた次の機会に。

by tacobu | 2006-01-22 15:01 |


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