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たこぶ・ろぐ-日本一お気楽な48歳-

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2006年 04月 18日

ついつい外国ものを手に取る

それがどうしたってことなんやけど。なんとなくね。外国ものの方が面白いような気がするねんなあ。面白くなかったら、翻訳しようという気にならへんやろし。翻訳されているってことはすなわち、ある程度面白いってことで。ちょっと保険のようやね。

アレックス・シアラーは何冊目になるやろう。「世界でたったひとりの子」(金原瑞人訳・竹書房)は、題名からしてなにか感動できそうって感じやけど。それがちょっと不安でもあったんやけどな。「感動させます」っていう話はどうも好きになれないからね。それに「世界でたったひとりの」っていうのも気に入らんかってんけどね。ほんまのことを言うと。そんなこと、あたりまえやろうと思ったしな。

ところが読んでびっくり。「世界でたったひとりの」というのは、ほんまにひょっとすると「ひとりだけ」っていうことやねんな。これ、SFです。未来の話。あらゆる病気が克服されて、人間の寿命は飛躍的にのびた。100歳を超え、120歳、あるいはもっと先まで生きられるようになった。と、そうなると「老い」がいやになる。そこで「老化防止剤」をみんな飲むようになった。そうすると見かけは若いままだ。

ところが、みんなの寿命が延びると、今度は子供の出生率が減ってきた。というより、ほとんど子供ができなくなった。どういうわけか、生殖能力が低下したのだ。そうなった未来の話。主人公の少年タリンはディートという男と暮らしている。といってもモテルを泊まり歩く生活だ。ディートは親ではない。タリンを「カードの賭で勝って手に入れた」とタリンには説明しているが、ホントのところは分からない。お金を稼ぐのはタリン。「子供と遊びたい」という家に、1時間いくらで「貸し出す」のだ。もちろんそれは違法なのだけれど、子供がいないのでみんな「子供と暮らしてみたい」と思ってやっている。お金のある人は。

で、本物でない子供もいる。小さいときに「PPインプラント手術」を受けると、子供のまま成長が止まるのだ。(「PP」はピーター・パンの略らしい。)それでも普通の寿命(120歳くらい)は生きていられる。ただし子供の姿形のままで。元に戻すことはできないので、これも違法ということになっているが、やっている人間は多く、ショービジネスで成功している「子供」もいる。「世界で最もカワイイ55歳」とかいって。

ディートはタリンにも「PP」を受けさせようと思っている。そうすればいつまでも「貸し出し」ができて稼げるからだ。だがタリンは大人になりたい、とも思っている。なんとかディートの手から逃れたい。だがディートと離れては生きていけそうにない。町には「ひとさらい」がうろうろしている。子供をさらって一儲けしようとする人間が大勢いるのだ。さて、タリンの運命は。

わくわくドキドキの冒険小説? いやいや。いろんな事件は起こるけれど、ハラハラする場面はむしろ少なく、タリンの心の動きが話の中心で、なんというか、哀愁さえ感じさせる物語になっている。ブラッドベリの「華氏451度」を思い出させるな。いろんな場面(赤ん坊を散歩に連れて出た夫婦が、大勢の人にもみくちゃにされるところとか、PPを受けた「大人」が集まるバーの場面とか)が映画的で、とっても面白かった。ちょっと怖かったけどね。誰も彼もが40代にしか見えない世界を想像すると。

「子供」っていうのがキーワードになってるんやろな。それを「希望」と置き換えてもいいかも。死の恐怖が遠くに行った世界で、それでもみんなが欲しがったもの。それが「子供」ってことか。

ラストもいかにも映画的で。だれかこれ、映画にせえへんかなあ。子役が大変やろうけど。

アレックス・シアラーはこれで何冊目かな。いいのもあるしたいしたことないのもあったなあ。特にラストの組み立てに無理があるっていうか、もうちょっとひねって欲しいなあって思うことが多かったんやけど、これはもう、満足です。



ミシェル・デル・カスティーヨの「タンギー」(平岡敦訳・徳間書店)はぶたこが借りてきました。面白いから読んでみと言われてね。

第二次世界大戦を挟む、スペイン内乱から戦後までの、少年タンギーの物語。ジャーナリストの母親とスペインからフランスに逃げ、フランス人の父親としばらく暮らすけれど、第二次大戦が始まって収容所に入れられる。その後も孤児として施設(修道院)に入れられたり、スペインに戻ったり、また父親を頼ってフランスに行き・・・

まあ、いろんなことがありすぎてねえ。伝記にしたら面白いねんけど。ほんまやったら、もっとひとつひとつのエピソードを丁寧に積み重ねて欲しいところなんやけどナア。収容所での生活がひどいものなんやけど、それも1エピソードに過ぎないってところが。いやあもったいないなあって思ってしまったよ。もっとじっくり、主人公の人生に付き合っていたいのだけれど、それを許さないのだねえ。

時代の流れっていうのがそういうものだ、と言えなくもないけれど。

by tacobu | 2006-04-18 18:33 |


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