2007年 08月 18日
金原ひとみは、年に1冊のペースで新作をだしているのだね。順調なのか、仕方なく書いているのかは知らんけど。 新作「ハイドラ」は、相変わらずの「拒食症少女」小説。読者モデルからやや売れっ子(この辺が微妙)になった主人公サキ。写真家の彼氏と同棲しているが、それは秘密。 友人に誘われて行った「パーティー」で知り合ったリツという青年。その青年がオーナーをしているライブハウスに出演していたバンドのボーカルとできてしまう。ふたりの「彼氏」の間で揺れ動くサキの心。というのがあらすじ。 このサキという子。自分に自信がなく、体重を気にし(35キロを少しでも上回ると、バスルームに飛び込んで吐き出しを始める)、ふたりの男の間で、どちらが自分の人生なのかと悩む。のだがなあ。 勝手に悩め。と言いたくなるのだなあ。だいたいが、男と同棲して、その男に寄りかかって生きていこうということに、何の疑問も不満も出てこないのである(ふたりの男はタイプがまったく違うが、どちらにも寄りかかっていくシチュエーションは変わらない) それで「自分はどこに」なんて。はっきり言って虫がよすぎる。 で、結局はどこにも結論はなく、どうなっていくのかは分からないままに、「ハタ」という感じで話は終わるのだな。ううむ。 いままでも金原ひとみの小説に出てくる主人公の女の子は、自分に自信がなかったり、でもわがままだったり、自分の主張が受け入れられないとキレたりしてたのだが。それでも、今の自分を打ち破ろうというあがきとか必死さとかがあったんやけど。 この話には必死さがない。 「オートフィクション」で出てきた、親の話もない。閉じた世界での、モヤモヤとした気分があるだけで。 それが今の「金原ひとみ」なのだろうなあ。いろいろ考えてしまった。今までの作品と並べると、「ちょっとひと休み」という感じもする。 ところで。 とても「長編」とは呼べないこの話を一冊の本に仕立て上げて(全部で130ページ余り。2時間もあれば読めてしまう)、しかも1200円は、高すぎるでしょう、新潮社さん。それだけ売れるってことなんかなあ。その点も考えさせられる。
by tacobu
| 2007-08-18 00:11
| 本
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