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たこぶ・ろぐ-日本一お気楽な48歳-

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2005年 09月 21日

【待ち暮らし】ハ・ジン(土屋京子訳)

文革時代の中国が舞台。軍医のリンは、故郷に妻と娘を置いて、都会で勤務している。故郷に帰るのは年に12日間だけである。
妻は器量も悪く、リンは妻を愛することができない。そして、同僚の看護婦であるマンナを愛するようになる。リンは妻と離婚しようとするが、離婚に同意しているはずの妻は、いざというときになると決心がつかず、何年も離婚は成立しないまま。
やがて「妻の同意がなくても、別居が続いているなら離婚できる」18年が経ち、晴れて離婚、再婚にこぎつけるのだが・・・という話。

官僚主義バリバリの体制の中での恋愛模様は、ある意味滑稽やったりしますな。リンとマンナは愛し合ってるんやけど、肉体関係を結んでしまうと「バレたときにやばい」ので、プラトニックな関係を続けるしかないんですな。それも「病院の敷地外では会えない」くらい厳しいもので。

最初のうちは、純愛の様相もあるんやけど、文字どおり「待ち暮らす」うちに変遷していくふたりの関係っていうのが面白いです。
なにより、主人公のリンの情けなさが目立ってしまいます。
官僚主義的な体制への批判の目もあるんやけど、話の中心はもっと個人的なことで、主人公の内面の動き(だいたい情けない)をいろいろ描いてますな。
激しい恋愛をしながら、周囲の目を気にしなければならず、体制からはみ出すこともできないんですね。

そういえば、同じ作家の「狂気」も似たような主人公のタイプやったな。
あの時の背景には天安門事件があったけど、そういう政治問題とは関わりなく、主人公の葛藤とかが描かれてましたね。まるで社会で起こってる現象は個人の感情ほどの感動がないみたいなくらいに。いや、反論もあるでしょうけど。
この「待ち暮らし」も同様で。なにしろ「狂気」以上に長い年月にわたる物語やから、政治体制はいろいろ変わっていきましてね。でもリンはどんな時代にあっても、それに逆らうことすらできなくてね。っていっても、一本芯の通ったところがあるわけでもなく。むしろ離婚された妻や、愛人のマンナの方が、どんな体制でもかわらへん精神力みたいなものが感じられます。面白いね。

作者は中国人やけど、この小説は元々英語で書かれてて、全米図書賞とフォークナー賞を受賞したそうです。2つの賞を受賞するのは大変珍しいのだとか。
たしかに賞を取るだけのことはある、っていうくらいには面白かったですね。

by tacobu | 2005-09-21 12:00 |


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