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たこぶ・ろぐ-日本一お気楽な48歳-

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2006年 04月 03日

ヤング・アダルト小説

「アダルト」といってもいやらしいものではない。10代の若者を主人公にした小説をこう呼ぶことが多い。昔は、その世代の小説というとどこか教育的なところがあったり、あるいは悩み多い世代としてその悩みをまっすぐ描いたもの、というのが普通だった。けれども、いつの頃からか、正直にその時代の若者の考えや行動を描こうというのが出てきたみたいで。いつの頃からなのかなあ。20年ぐらい前かなあ。こういうジャンル分けをするようになったのって。

で、僕はこの分野の小説が結構好きです。内容はちょっと過激やったりするねんけど。10代から20代になろうとする若者の生活とか心の動きを描くのでね。善人でもいろんな悩みを持つし、悪人はとことん「ワル」やったりする。それこそ人を殺しかねへんぐらいに。

ケヴィン・ブルックスの「ルーカス」(林香織訳・角川書店)もこの分野の小説になるんでしょうが。主人公は流れ者の若者。ルーカスという名前。それは名字か名前かも分からない。語り手であるもう一人の主人公ケイトは、ルーカスに惹かれるんですけど、島(この閉塞的な社会!)の人間は流れ者、よそ者を受け入れようとしない。それどころか、若者はこの見知らぬ男を追い出そうと画策し、そして悲劇がおこる。

文中にも触れられている、ハーパー・リーの「アラバマ物語」を彷彿とさせるような話でもありますな。映画しか知らんねんけど。

あらすじだけをこうやって書くと、余計にそう思えるのかも。でもね。このルーカスの人間性というか、よく分からない内面というか、そういうのが昔の小説とは違うところなんですな。つまりは「よく分からない」のですね。

ありきたりな話やったら、このルーカスは、流れ者だけれどきれいな心を持った少年で、頭もよく、勇気もあって・・・などとなるんでしょうが。

ケイトが環境保護の運動をしてるというと
「何のためにするの?」
と言うし、自分の身を守るためには、激しい暴力もいとわない。それをみて、暴力を肯定しそうになるケイトの、その心の動きも今までの教育的な小説には絶対に出てこなかったものですな。

すべてをケイトの視線から描いているのだけど、それがとてもとても克明に描かれていて。おかげで300ページを超える大分量の小説になってます。ここまで克明に書いてどないするねんとも思うけれど、「自分の気持ちを整理するために書いた」という設定からすると、これは当然なのかも。だからかなあ、大分量なのに全然退屈せずに最後まで読めましたよ。いやあ、たいしたものだ。



もう一冊。アガサ・クリスティ「ポアロのクリスマス」(村上啓夫訳・早川書房)。

まあ、いつもどおりのポアロものなんですけどね。あんまり有名じゃない小説かな。わしが知らんかっただけ? ともかく面白かったな。最後の、これまでの出来事を整理して、事実を積み上げていって、そして真犯人に到達するという、その構成はいつもと変わらへんねんけど、やっぱりドキドキしつつ読んで、そして感心してしまう。最後の章は一気に読んでしまいますね。ポアロさんの独演会は。

この早川書房のシリーズ(クリスティ文庫という名前が付いている)は、とっても読みやすい訳と体裁で、とってもいい感じ。金原瑞人さんが「翻訳には旬というのがあって、その時代にあった訳がある。だから新しい訳の方がいい」というようなことをどこかで書いてはったらしいけど。このシリーズは今の時代にぴったり合ってるのかも。

by tacobu | 2006-04-03 18:27 |


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