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たこぶ・ろぐ-日本一お気楽な48歳-

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2006年 04月 30日

予想が外れ

レベッカ・ブラウンという著者名はきっと女性だろうし、翻訳が柴田元幸さん、題名が「体の贈り物」(マガジンハウス)っていうから、これはきっとジャンキーな小説、もしくはセクシャルな内容か。たとえば体を張って生きているニューヨークの女の子の話とか、で、翻訳が柴田さんやから(こればっかりやな)きっと現代のニューヨークを描いてるはずやし(思い込み?偏見か?)、どうやら最近の小説みたいやから、面白そうやと思って読んだんですな。

舞台がニューヨーク、というところは思ったとおりやってんけど。読み進めるとどうも様子がおかしい。予想したような展開にはならない。女の子が男の子の部屋をたずねていって・・・。ナニをするのかなあ、と期待してたら、掃除とか食事の世話とか。どうもおかしい。で、読み進んでいくうちに分かってきた。この話。末期エイズ患者の生活支援サービスをする女の子の話なんですね。先入観たっぷりで、どうもすみませんでした。

全11編の短編。全部が同じ主人公(わたし)やから、つながってるともいえるけどね。それぞれの話、一つ一つを取り上げても、とても面白い。こういう話を読んで「面白い」というのは不遜なようにも思うけど。でも、妙に深刻にならず、情緒過多に陥らず、むしろ淡々と書き綴られているところに好感が持てます。

患者もいろいろで。静かに病気を受け入れる人。子供のように駄々をこねるひと。見た目にも衰えていっているのに、いつまでも元気で居ると思い込んでいる人。それぞれに暖かい目を注いでいて、それでいて感情は抑えられている。といって、たんなる現場レポートじゃなく、ちゃんとした物語になっている。

こういう文章を読むと、ある意味で自分がその場に立ち会っているような気になります。そして、自分はエイズに対してどれほど知っているかっていうと、ほとんどなにも知らんねんなあっていうことを思いしらされたり。あるいは、死期が迫ったらどうなるんやろう、周りの人は、そして自分は、などということまで考えさせされてしまったり。

そういう風に「考えさせられる」小説でした。それが、あんまり深刻に落ち込まずに考えることができる、そういう気にさせる、見事な物語でした。

by tacobu | 2006-04-30 18:39 |


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