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たこぶ・ろぐ-日本一お気楽な48歳-

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2007年 01月 08日

時代小説づいてしまった

特にそんなつもりはなかったんだけど。なぜか最近時代小説を立て続けに読んだ。きっかけはテレビで「たそがれ清兵衛」を見たからで、この原作を読んでみたい、藤沢周平ってけっこういいかも、と単純にそう思ったからだ。

しかし最初に読んだ「早春」の表題作は、珍しい(というか唯一の)現代小説だった。
時代小説に比べるとやや劣るという評価が一般的らしいが、そんなこともないように思うなあ。そこはかとなく漂う寂寞感がなかなかいいと思うねんけど。時代小説を読みなれると、現実に近いものは受け付けなくなるのだろうか。ちょっと読者層が違うという気はするけどね。
他に収められている時代小説2編はなかなかいいなあと思った。そのほかにエッセイも収録されていて、まあ人となりも分かるようになっている。でもこれで「藤沢周平入門」というわけにはいかないようだ。

映画と同名の「たそがれ清兵衛」は、題名と「たそがれ時になると家路を急ぐ城勤めの武士」という以外に映画との共通点はないなあ。逆に映画とそっくりなのは、一緒に収められている「祝い人助八」だ。二人の娘は出てこないが、みすぼらしい身なりとシャイな性格、幼なじみの友人の妹に思いを寄せるなど、ほとんどがこの話から映画の題材をとったに違いない。
ただ題名の「祝い人」は「ほいと」と読み、乞食のことなのだそうだ。乞食のようにみすぼらしいことからついたあだ名ということになっている。さすがに映画で「ほいと」は使えなかったのだろうなあ。

で、やはりというかさすがというか、この「祝い人助六」がいちばん面白かったかな。というかねえ、この本に収められている話が、設定の違いこそあれ一つのパターンにはまっていて、こういう具合に話が進んでいくのでは、という具合に話が進んでいくのだなあ。
つまり、剣豪とかお庭番とか、そういう城内の腕利きではない、どちらかというと城内の雑用を勤めている下級武士が、いざというときに先祖伝来あるいは秘伝の腕前で、藩内の危機を救う、というもの。
そしてその藩内の危機というものが、汚職であったり癒着であったりというところが、テレビでよく見る時代劇とちょっと違うところなのだな。そこには武士の気高さとか武士道とかいうものが見えないのだ。
そういうちょっと泥臭いというか生臭いというか、そういう騒動に巻き込まれて、下級の武士がしぶしぶ手柄を立てる、といっても大した報奨がもらえるわけではない、というところが面白いのだけれど、これだけ同じように並べられると、もういいかなあと思ってしまう。

時代劇のあるパターンにはまったときの強さと面白さとオモシロなさを全部味わったような気分だ。



畠中恵の「しゃばけ」は、同じように江戸時代の江戸が舞台だけれど、こちらは妖怪どもがうようよ出てくる、ちょっとしたエンターテイメント小説になっている。

大店(薬問屋)の若だんな一太郎には、手代に化けた二人の妖怪をはじめとする妖(あやかし)がまわりに居て、何かと面倒を見てくれる。
ある夜、ひとりで出かけた一太郎は何者かに命を狙われる。その後、薬屋を狙った連続殺人が起こるが、下手人はそれぞれ別の人間だった。しかも普段は人殺しなどするようなものではない。一太郎は妖たちの力を借りて事件を解決しようとするのだが。

エンターテイメント小説なんだけど、ちょっと悲しいところもありおかしいところもありで、最後まで一気に読ませてしまう。ああ、エンターテイメント小説って、こうでなくっちゃねえ。

どうして薬屋ばかりが狙われるのか、下手人がそれぞれ違っているのはなぜか、真の犯人の目的は何か、そして一太郎の、本人も知らない秘密とは。などと、次々と謎が深まっていって、飽きることがない。
その間にはさまる会話もオモシロイ。ちょっとずれてる妖たちの会話とか。ユーモアの感覚も一級だ。



そのほか、有川浩の「図書館戦争」も面白そうやなあと思って読み始めたんだけど、半分までで挫折。
メディア良化委員会による本・雑誌の検閲に抵抗する、図書館戦闘員の戦いを描いたものなんだけど、発想は面白いのに内容は中途半端なドンパチと青春熱血ものになってしまっている。最後まで読ませるハラハラ感やドキドキ感が伝わってこない。惜しいなあ。

by tacobu | 2007-01-08 23:45 |


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