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たこぶ・ろぐ-日本一お気楽な48歳-

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2007年 04月 29日

不思議な話再び

エドワード・ケアリーの「アルヴァとイルヴァ」は妙な話だ。舞台は架空の町エントラーラ。アルヴァの手記に、書き手が解説するという形になっている。そしてその本は「アルヴァとイルヴァ・町を救った双子の姉妹」という題が付いている、エントラーラの観光案内も兼ねている。章と章の間に、レストランや遺跡の紹介なども載っている。もちろん、すべて作者の創作である。作者の創作ということでいうと、驚くことに各章の扉に載っている写真(本の扉にもある写真)にある、エントラーラと双子の姉妹の像も作者の創作だそうだ。彫刻家、画家でもあるそうだ。

エントラーラに双子の姉妹がおりました。アルヴァとイルヴァ。ふたりはプラスチック粘土で町の模型を作りました。アルヴァは町に出てその寸法を測り、イルヴァは家から一歩も出ずに模型を作り続けました。そして町に悲劇が起こったとき、町の人々の心を癒し勇気を与えたのはその模型でした。

というと、感動的なおとぎ話になりそうなのだが、そうはならないのだな。アルヴァとイルヴァはいつも一緒にいる。しかしアルヴァは独り立ちしたい。イルヴァは離れたくない。子供のころは一緒にいるのが普通だったけれど、徐々に二人の間に溝ができていく。しかし二人はやっぱり離れられない。離れては生きていけない。
アルヴァには恋人ができる。イルヴァは嫉妬する。アルヴァは外の世界へ出ていこうとする。イルヴァはそんなことをしたら死んでしまうと泣き叫ぶ。
粘土の町の模型は、外に出たいアルヴァと家から出たくないイルヴァの妥協点でもあったのだな。町の模型を見ている間は安心するイルヴァ。町の模型ができあがれば、外に出るのも怖くなくなるだろうと考えるアルヴァ。しかし、模型が完成する前に町は崩壊する。

人知れず作ってきた町の模型。それを町の人たちは(アルヴァとイルヴァのことを不穏な目で見ていたのに)奇跡と呼び、癒される。しかしそれは二人にとってなんの関係もないことだった。アルヴァは一刻も早く町を出たかった。イルヴァは誰にもじゃまされずに模型を作り続けたかった。そして不思議な運命がふたりに起こる。そして話は終わる。

ほとんどがアルヴァのひとり語りで書かれているので、アルヴァの私小説として読み進んでいくと、ときどき名所案内が挟まって、妙な感じで現実に引き戻されるような気がする。
アルヴァの手記(の形を取った本体部分)が終わって、後日談のような形で書き手の手記が加わる。どこか「アンネの日記」のような雰囲気。内容は全然違うけど。

読み進んでいくうちに、「町を救った」うんぬんというのは、この書き手の主観であることが分かる。双子の姉妹には、町を救うなんて気はさらさら無かったのだ。話の内容も、ほとんどが二人の関係について、その不思議なつながりについて、なのだ。題名にだまされてはいけないな。作者の術中にはまってしまった。

by tacobu | 2007-04-29 00:23 |


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