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たこぶ・ろぐ-日本一お気楽な48歳-

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2008年 01月 19日

【地下街の雨】宮部みゆき(集英社文庫)

本の奥付けをみると、1994年の刊行と書いてあるし、折り返しのところにある「集英社文庫 宮部みゆき」のところにも、この本しか紹介していないから、ずいぶん始めのころの出版、ということなんやろなあ。
7編の短編集。表題作は、失恋の痛みの中にいる主人公に近づいてくる謎の女、というサスペンスタッチ。「決して見えない」はミステリーというより、怪談に近い。「不文律」では、偶然が引き起こす悲劇。「混線」は電話を題材にしたホラー。「勝ち逃げ」はやや明るいサスペンス。「ムクロバラ」はホラーとミステリーを兼ね備えたような味わい。「さよなら、キリハラさん」は、SFか!と思いきや・・・・という話。

どれもちょっとずつ違うテイストで、しかもどれも同じように面白い。「物語」を作るのがうまいなあ。ひとりの人間が、これだけのものを書けるんやなあ。
しかし、確かにひとりの人間が書いたのだ、と思わせるところもあります。どれも登場人物がしっかりと描かれていてね。どれも、それぞれの人の表情とかが思い浮かぶ。まるで映像を見ているみたいに。それって、作者が作品を愛している、ということの表れやろなあ。そして同時に、冷静に話を作っているということも。

さて、読み始めて、「さよなら、キリハラさん」は、前に読んだことを思いだした。読んでる途中で思いだしたのだが、どうにも結末が思いだせない。しかたなく最後まで読んでしまったよ。で、以前読んだのと同じように、ホッとして、楽しい気分になったのだった。

7編全部が素晴らしいんだけど、どれかひとつ、ということなら「ムクロバラ」が一番かな。ほかとちょっと違うところは、
「誰でも何かのきっかけで、犯罪を犯してしまうのですよ」
という設定が、とても怖いのだ。怖い。ほかと比べて格段に怖い。これ、映画かなにかになったら、もっと怖いかも。

by tacobu | 2008-01-19 00:33 |


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