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たこぶ・ろぐ-日本一お気楽な48歳-

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2008年 02月 01日

【チョコレートコスモス】恩田陸(毎日新聞社)

脚本家が、仕事場の窓から何気なく町の公園をみていると、そこに不思議な少女が居た。そこに居る他人をじっと見つめていたかと思うと、やおら立ち上がり、その人と同じ動作をする。そして「あっ」と思うまもなく、その人と同化してしまう。
という話から始まったら、これはもう、恩田陸得意の世界ではないか、これからどんな不思議な話が展開するのか、この少女が何者なのか、異形の世界の者か、はたまたエイリアン?
などという空想は見事に裏切られてしまうのでありました。
この話、ホラーでもミステリーでもなく、純文学、純粋な、お芝居ものの物語なのですね。

役者一家の家に生まれて、幼いころから俳優のキャリアを積んできて、実力もある女優東響子と、芝居のことにはまったくの無知だけれど、瞬時に役になりきる才能を持っている少女(といっても大学一年生だが)佐々木飛鳥。この二人を軸に、新しくできた新国際劇場のこけら落とし公演のオーディションという舞台で、様々な人の群像劇のように話は進みます。

お芝居もの、というと、どうしてもわたくし「ガラスの仮面」のイメージが強いのでありますが、この「キャリアを積んだ実力派女優と、天賦の才能を持った新人女優」という構図は、ちょっとそれを思い起こさせますな。
さらにこの新人女優(新人とも言えない。なにしろ大学に入ってから同好会のようなところで芝居を始めて、即オーディション、なのだから)の、舞台で醸し出す雰囲気が、ガラスの仮面の北島マヤに通じるところがあって、ますます「ガラスの仮面」風と思ってしまうのです。

しかし、ただのお芝居ストーリーになっていないところは、さすが恩田陸です。ちょっと謎めいた佐々木飛鳥の動きから目が離せなくなってしまうのですね。
お芝居のシーンも、実際にその舞台を見てみたい! と思わせてしまうほどです。やっぱりうまいなあ。
さらに、「この先どうなるの? この人の目的はなに?」といった、ミステリーチックな要素もあって、先先と読み進んでしまいます。だいたい題名になった「チョコレートコスモス」って、いつ出てくるのだ? と思ってたら・・・・・・。ううむ。

ミステリーを期待していたら、別の世界が待っていた、という感じ。まあ役者の設定とか、あり得ない話なんだけど、なんとなく信じたくなるような、そういう組み立てになっているところがうまいですねえ。
さて、次は何を読もうかなあ。

by tacobu | 2008-02-01 00:29 |


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