2008年 02月 07日
「グリーン・レクイエム」は1970年の作品、その続編である「緑幻想」は1980年の作品。この二つが一冊になったのは、この本が初めて(2007年11月)なのだそうだ。 少年時代に、山の中の洋館の温室で出会った、緑の髪の女の子。その子とそっくりな女性に再び出会った男性。その子の秘密は? エイリアンとか、変身とか、死と魂とか、それからそれから、といろんな要素がからみあってくる話です。 「グリーン・レクイエム」は、SFとしてはとても面白い。この作品では「新井素子らしさ」は影をひそめて、語り口もほかの作家の作品かと思うくらい。しっかりとした(変な言い方やなあ。なんか新井素子のことを書くと、変な言い方がばんばん出てきてしまうのですな)文章です。 それに比べると、続編とはいいながら「緑幻想」はどちらかというと、散文的というか。詩的ともいえるけれど。なにか作者のひとりごとがぶつぶつと綴られているような印象です。こちらの方が、「グリーン・レクイエム」の倍ほどの分量があるんだけれど、作品の密度としては前者のほうがあるような。 文体も、いつもの新井素子調。真面目なのか不真面目なのか、と思わせるところもあって。でも根本の思想というか、言いたいことはずっと変わってないんですよねえ。この二つとも。 「人類はそれでも生きる価値があるか」 ううむ。軽い物語になりそうなのに、何故か主題が大きい。新井素子の特徴かなあ。 もうひとつ、特徴的やなあと思うのは、結末が結末らしくないんですね。どの話も。 「えっ? じゃあこのあとこの人はどうなるの?」 と思わせて、それではたっと終わってしまう。「グリーン・レクイエム」もそう。完結編かと思われた「緑幻想」も、よく考えると、これで終わりとは・・・・という印象。 味わい深いともとれるし、中途半端な、ともとれる。そこが新井素子を受け入れられるかどうかに関わってくるかも。
by tacobu
| 2008-02-07 00:24
| 本
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