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たこぶ・ろぐ-日本一お気楽な48歳-

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2008年 02月 29日

【野生の呼び声】ジャック・ロンドン(深町眞理子訳・光文社古典新訳文庫)

「古典」と呼ぶにふさわしい物語ですな。かつて映画にもなったのでは(うろ覚え)。
大型犬のバックは、もともとは裕福な判事に飼われている番犬だったのだが、召使に売り飛ばされて、アラスカでそり犬になる。いろんな人間にかわるがわる飼われて、野生の力を取り戻して生き抜いていく。
「犬と人間の友情」物語かと思ったら、全然違うんですな。かつては少年少女向けに、そういう感動物語として、やや脚色されて翻訳されていたようですが、新訳では(おそらく)かつては訳されなかった場面(ひどい場面が多々ある。なにせ、ゴールドラッシュの時代の、厳寒のアラスカで、犬は消耗品でもあったし、犬同士も隙あらば仲間をも牙にかける、生存競争の最も激しい時代と地域なのだ)も、余さず訳されているらしい。

本当に犬を大事に思い、バックの尊敬を得るソーントンに出会って、ようやく「友情物語」となるのだが、それも一瞬のこと。
そしてなにより、この本のスゴいところは、どこまでも視点がバックのものなのだな。人間から見た描写というものもあるけれど、バックがどう感じたか、バックがどうなっていくかが物語の中心で、そこから離れることがない。
米原万里さんが「犬の気持ちになりきって書いている」といったのは本当だった。
そして、作者の言いたかったことは、犬と人間の共存共栄なんていうことではなく、野生の生活への憧れではなかったか。
最後には狼の群れの頂点に立つことになるバックそのものに、作者の強い憧れを感じるのです。

by tacobu | 2008-02-29 00:29 |


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